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麻酔科


手術症例とその動向

麻酔科では手術・検査・処置の麻酔業務と手術室全体の安全管理を行っております。平成30年度の麻酔科管理症例は、総症例数2166例と、昨年度と比較して181例ほど増加し、過去最高数となりました。手術件数は増加しましたが、効率の良い手術室の運営を行うことで、出来る限り定例時間外の手術室稼働を押さえていこうと努力しています。麻酔管理症例の高齢化は昨年と同様であり、昨年度も75歳以上の症例351例(32%)と300例を超しており、そのうち90歳以上の超高齢者は17例でした。
またアメリカ麻酔学会における全身状態分類(ASA-PS)において重症であるClass III以上の合併疾患をお持ちの患者さんは254例(23%)と、昨年度と同程度の割合でした。

 麻酔科スタッフの写真と、麻酔管理症例の推移の図

各科と綿密な連携をとった上で患者さんの全身状態の評価を行い、合併疾患の重症度を把握して、麻酔関連偶発症の発生を予防する努力をしています。特にご高齢の方においては全身疾患が隠れている場合がありますので、関係各科にご協力を依頼して全身精査を行っています。各科のカンファレンスにおいて手術症例を提示していただき、検査や説明内容の追加指示があれば行っています。
麻酔管理では、超短時間作用型麻酔薬(レミフェンタニルやデスフルラン)を使用し、速やかな覚醒と安全な麻酔管理を心がけています。
術後鎮痛には、硬膜外麻酔を施行した症例では、硬膜外PCA(PCA:患者自己鎮痛法)を積極的に取り入れています。
神経ブロックの使用も増加しています。最近は抗凝固療法・抗血小板療法を行っている患者さんが増加し、血液凝固障害(肝機能低下や抗凝固療法中)・血小板数減少など、硬膜外麻酔による鎮痛を施行することができない患者さんが増加しています。このような患者さんに術後神経ブロックを施行することで鎮痛をはかっています。腹部手術で硬膜外カテーテルを留置できない場合は腹直筋鞘ブロックや腹横筋膜面ブロックを行っています。整形外科の膝関節置換術の術後には下肢静脈血栓塞栓症の予防に抗凝固療法を行うため、硬膜外カテーテルは留置せず、持続大腿神経ブロックを行い、良好な鎮痛を得ています。

特徴

 

1.

心疾患:虚血性心疾患や弁膜症、不整脈などの心疾患を合併している患者さんについては、循環器内科の先生方に心機能の評価をしていただき、厳密な周術期管理を行っています。必要であれば心疾患の治療を優先することもあります。

2.

肝腎疾患:肝・胆・膵センターや腎臓内科を有しているため、肝硬変や肝腫瘍などの肝疾患、糖尿病性腎症などで人工透析中の症例や慢性腎不全症例も多くいらっしゃいます。肝腎機能の低下は麻酔薬の代謝に影響を及ぼし、薬剤の排泄が遅延するため特に麻酔覚醒に大きな影響を及ぼします。ゆえに肝腎疾患をお持ちの患者さんには、使用する薬剤の種類、投与量に注意して麻酔管理を行っています。また周術期の肝機能、腎機能の悪化防止にも努めております。

3.

外科・血管外科手術:外科・血管外科の症例の特徴としては、特に消化管手術や肝臓手術での腹腔鏡下手術の増加があげられます。手術侵襲は低くなりますが手術時間は増加するため、手術件数の増加に比して手術室稼働時間の増加が多くなっています。手術体位も長時間の頭低位などになるため、マジックベッドの使用や除圧パッドの使用で圧迫による障害を防いでいます。輸液管理や体温管理にも細心の注意を払っています。

4.

整形外科手術:整形外科では脊椎症例が293例と全症例の53%を占めており、後方固定術での腹臥位での管理・頸椎症などの挿管困難を伴う気道管理など、特殊な麻酔管理が必要とされています。また昨年度も大腿骨頸部骨折などの外傷患者の搬送も多く、骨接合術や人工骨頭置換術などの麻酔を行っています。特に大腿骨頸部骨折は高齢者に多いことから、認知症や心疾患、脳血管疾患などを合併症すること多く、また受傷から時間が経過すると全身状態が悪化することも多いため、厳密な管理を行い、またできる限り早期に手術できるよう調整しています。

5.

脳神経外科手術:脳腫瘍や脳動脈瘤頸部クリッピング術などの定例手術の外に、くも膜下出血や脳出血、頭部外傷などの緊急手術も行っています。ここ最近は脳機能モニター(運動誘発電位、体性感覚誘発電位)をほとんどの症例で装着しております。一部の麻酔薬がモニター結果を修飾することが報告されておりますので、影響を与えにくい麻酔薬を使用して麻酔を行っています。緊急手術にも出来る限りスムーズに対応できるよう心がけています。手術室内での麻酔だけでなく、関係各部署の協力のもと、血管造影室でも全身麻酔を行っています。血管造影室で脳動脈瘤に対する全身麻酔下コイル塞栓術は昨年で37症例におよび、より良い治療環境の提供と低侵襲の治療による患者負担の更なる軽減を目標としております。

6.

緊急手術:緊急手術(来院当日に手術)は179例と昨年と比較して微増でありますが、1~3日待機して手術を行う準急患手術は逆に増加しております。手術室稼働時間の増加で、救急部を受診した急患のうち、骨折など待機できる手術は待機していただいてから手術を行っていただいています。緊急度の高い手術は勿論当日に手術をしていただいています。 

さいごに

当院においては、手術症例の増加と高齢化、重症化と救急症例の増加など、麻酔管理は年々難しくなってきています。しかし、麻酔科医と各診療科主治医とが連携し、患者さんにとって少しでも良い状態でより安全な周術期管理が行われるよう努力していきます。