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指導医の声

研究のススメ

研修管理委員長(副院長)東 秀史

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2016年のノーベル生理学医学賞は、東京工業大学の大隅良典栄誉教授に授与されました。受賞理由は、オートファジーという細胞内自食作用の機構解明に大きな貢献をしたことです。これで科学分野における日本人のノーベル賞受賞者は20人目となり、我国は科学立国と名乗っても恥ずかしくない実績を残してきました。しかし、これらの研究成果は20年以上前に発表されたものであり、はたして、今後も日本からノーベル賞級の研究成果が継続して出てくるかは怪しい状況です。国からの大学運営費助成金が縮小傾向にあり、基礎研究に対する投資が鈍くなっているからです。
最初は海のものとも山のものともつかないような研究が、のちに人類社会に大きく役立つ基礎となった例は数多くあります。しかし、研究資金が少なくなれば、確実に実績を期待できる学問分野には分配されても、短期間での研究結果が出にくい、新しい研究分野への配分が少なくなる事でしょう。さらに人件費が縮小され研究員そのものが減少すれば、ノーベル賞級の成果の可能性を秘めた基礎研究の衰退を招き、日本が科学立国の看板を外すことになりかねません。研究費の削減もさることながら、研究に従事する若者の減少も危惧されています。
現在の臨床研修制度が開始されて13年目になりました。この臨床研修制度の良いところは、研修期間中に多くの診療科を経験し、基本的な診療能力を身につけることができる点ですが、その反面、研修終了後に医局に属しない、専門分野での研究を経験しない医師も多く見かけるようになりました。決して市中病院で臨床医師としてのキャリアを全うすることを否定するつもりはありませんが、若い医師たちには是非、いずれかの医局に入局して、さらに数年の研究生活を送っていただきたいと思っています。大学の医局は、同じ専門分野を目指す医師が互いに団結し、切磋琢磨していく職域団体であり、そこでの研究生活が、のちの医師としての生き方、ものの考え方に大きく係ってくるからです。
臨床では、患者さんの病状は常に変化します。そのため、日々その変化に対応し、考察して対処しなければなりません。しかし、研究は自分が疑問に思うことに対して、自ら積極的にアプローチし、方法を考え、結論を導かなければ何も生まれません。さらに、研究を進めていくうちに、初めに想定していたものとは違った結果、予期せぬ現象に出会うかもしれません。研究におけるこの「セレンディピティ」で、大発見に繋がった例は過去にいくつもあります。例えば世界初の抗生物質であるペニシリンは、1928年、アレクサンダー・フレミングがブドウ球菌の培養実験中に、偶然、コロニー周囲にアオカビによる阻止円が生じる現象に気づいた事がきっかけで発見されました。このような大発見に繋がる研究は極めてまれですが、何らかの研究をしていなければそのような大発見の機会もなくなってしまいます。そして研究には、気力、体力、やる気、脳の柔軟性がある若いうちにでなければ、なかなか踏み込めないものです。
当院では、2年間の臨床研修期間中に2回の学会発表ができる様、指導しています。研修医の間に基礎研究は無理ですが、臨床で経験した症例から学んだことをまとめて発表し、できれば症例報告にまとめる、そうすれば研究に繋がるリサーチマインドを養うことになります。2年間の臨床研修の後、早い時期の数年間を研究に没頭することは、医師としてのキャリアを構築するうえで決して無駄ではなく、むしろ臨床における問題や疑問に対する考え方、対処の仕方のバックボーンになると考えています。若い医師には、是非、臨床の経験だけでなく、研究の道も経験していただきたいと思っています。