文字サイズ中文字サイズ大

 

ホーム > 患者の皆様へ > 消化器の病気


ESD治療

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic Submucosal Dissection)


胃壁は内腔側から順に粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜に分かれています。癌は、粘膜層から生じ、時間が経つにつれ徐々に下の層に入り込んでいきます。粘膜下層までにとどまるものを早期癌といい、筋層に達したものを進行がんといいます。転移がない早期癌の中で粘膜層にとどまるものが経口的内視鏡による治療の対象となります。早期癌の内視鏡的治療法には以前よりEMR(内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic Mucosal Resection)がありました。色々なバリエーションがありますが、基本的には病変の下の粘膜下層に液体を打ち込んで膨隆させ、投げ縄のように大きくしたり小さくしたりできる高周波スネアという金属の輪を病変の周囲に掛けて絞って電流を流して切るというものです。この方法は比較的簡単に短時間で行うことができ、合併症も少ないため今でも症例によっては用いられます。欠点は一度に切除される面積が小さく、大きな病変はひとかたまりで切除(一括切除)できず、いくつかに分けての切除(分割切除)になってしまうことです。分割切除されると術後の検査(病理検査)の際、取り残し無く切除出来たかどうかの判断が難しくなります。実際大きな病変では取り残しが起こりやすく、術後再発がみられることがあります。

そこで10年ほど前からESDと呼ばれる新しい内視鏡的治療法が行われるようになりました。これは病変周囲に目印をつけた(マーキング)後、粘膜下層に液体を打ち込んで膨隆させ、目印の外側をぐるりと特殊な器具で切開し、病変下の粘膜下層を剥離していくものです。最初に病変を取り囲んで切開するので理論上はどんなに大きな病変でも取り残しが起こらず、EMRに比べて高い一括切除率が得られます。欠点は手技が非常に難しく、時間がEMRは数十分で終わるのに対し、大きさや場所によりますがESDは早くても30分、長いときでも数時間に及ぶことです。また出血、穿孔(胃の壁を貫通してしまうこと)といった合併症もEMRに比べて多くなります。

内視鏡的治療対象となる病変には、胃癌治療ガイドラインによると以下のような条件があります。

 (1)大きさが2cm以下の粘膜内にとどまる病変
 (2)組織型が分化型(癌の中でも比較的正常に近い細胞や形が残っているもの)
 (3)隆起型が潰瘍瘢痕を伴わない陥凹型


こういった病変はほとんど転移がないため適応となっていますが、これらの条件の病変以外でも転移が少ないものが知られています。粘膜にとどまるものでは2cm以上の潰瘍のない分化型癌、3cm以下の潰瘍のある分化型癌、2cm以下の潰瘍のない未分化型癌(正常組織に見られる細胞や形とは著しくかけ離れた性状を示す癌)、粘膜下層に浸潤するものでも3cm以下で浸潤が0.5cm以下の分化型癌は技術的に一括切除可能であれば臨床研究的に切除しても良いとされています。これらの病変は適応拡大病変と言われており、大きな病変が含まれますが、ESDであれば一括切除が期待できます。だたしあくまで「臨床研究的」であり治療法として推奨されている訳ではありません。適応拡大病変はやや転移率が高いという報告もあり内視鏡的切除には慎重な検討が必要です。

当院も2006年からESDを導入しています。今後も正確な診断のもとに適応を見きわめながらESDをしていきたいと思っています。

当院のEMR、ESD症例数の推移

 
年度別内視鏡的消化管粘膜切除術・粘膜下層剥離術件数の図 
年度別内視鏡的大腸ポリペクトミー・EMR施行数の図